
この遺伝子座については、以前にも頭頸部SCCで増幅がみられたと報告されています。 では、この領域のどの遺伝子が、SCCの発生に寄与しているのでしょうか。 DePinhoらは、既知の扁平上皮細胞分化調節因子であるp63がこの遺伝子座にあり、SCCサンプルでのみ過剰発現しているのを発見しました。 この遺伝子が過剰発現しているマウスは、重度の扁平上皮化生を来すことから、p63はSCCの癌遺伝子候補として有望です。 3番染色体領域が増幅している以外に、NSCLCサブタイプ間に大きな差はなく、腺癌およびSCCは、共通の肺幹細胞または前駆細胞から生じているのではないかと考えられます。 DePinhoらはこのほか、NSCLCデータセットと、最近発表されたほかのCGHデータセットとを比較し、8p12および20q11にあるアンプリコン2個が、NSCLCと膵管腺癌とに共通していることを突き止めました。 腫瘍サンプルで増幅および過剰発現が認められた上記領域の遺伝子には、以前に乳癌での増幅が認められているWHSC1L1と、紡錘体チェックポイントでオーロラA機能を調節するTPX2とがありました。 以上のように、この技術は、肺癌の遺伝的根拠を明らかにする重要な新候補を生み出しています。 Kristine Novak この論文の原文は、ネイチャー誌で確認してください。 |
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| 老化 真実は生体内にあり | |
培養細胞系を用いた試験により、癌遺伝子による老化が形質転換に対する重要な保護作用であることが示されていますが、生体内腫瘍形成にみる老化の役割は明らかにされていません。 ネイチャー誌に掲載された論文4件では、老化によって、動物モデルおよびヒト組織腫瘍の進行が妨げられていることが明らかになり、この問題が鎮静化しました。 癌遺伝子の誘導など、さまざまな細胞ストレッサーに反応して起こる安定した増殖停止を特徴とする老化は、ARF−p53シグナル伝達経路によっても、INK4A−RB (網膜芽細胞腫タンパク質)シグナル伝達経路によっても調節されることがわかっています。 Chrysilis Michaloglouらは、メラノサイトの良性腫瘍であり、癌遺伝子BRAFで活性化変異を来たしていることが多いヒト母斑(ほくろ)の老化を検討しました。 母斑は、数十年間にわたって増殖停止状態を維持し、悪性化(メラノーマ)することはごくまれです。Michaloglouらは、変異BRAFを発現する母斑は、高レベルの老化マーカーをも発現しているために、増殖しないことを明らかにしました。 これは、活性化BRAFがヒトメラノサイトを十分に形質転換できない(老化機序を不能にして、メラノーマを生じさせるには、さらなる変異が必要となる)ためです。 しかし、母斑細胞なら必ずINK4A、ARFおよびp53をアップレギュレートするわけではなく、ヒトメラノサイトにはまだ見つかっていない老化誘導機序が、ほかにも存在していることがわかります。 Zhenbang Chenらの論文では、ヒトおよびマウス双方の早期前立腺癌にも、老化細胞が存在することが明らかにされています。 マウス前立腺癌細胞は、腫瘍抑制因子PTEN (ホスファターゼとテンシンの相同遺伝子)を不活化すると、生体外でも生体内でもp53依存性経路を通じて老化すします。 しかし、PTENおよびp53がともに消失すると、浸潤性前立腺癌が迅速に形成されます。すなわち、p53を介する老化誘導は、前立腺癌を進行させないための保護機序と思われます。 腫瘍の老化細胞を調べる上での制約のひとつは、利用できるマーカー数が少ないことでした。 Manuel Colladoらはマイクロアレイを用いて、発現レベルが老化誘導と相関している少数の遺伝子を特定しました。 また、マーカーの複合パネルを用いて、活性化RASによって誘導されたさまざまなマウス腫瘍について、老化細胞の分布を分析したところ、老化細胞は前癌性腫瘍には均一に存在しているものの、悪性腫瘍には存在しないことがわかり、癌遺伝子による老化が、腫瘍進行の制限に一役買っているとの結論に達しました。 Melanie Braigらは、発癌性RASに反応して生じる老化誘導の新たな機序について検討しました。 造血細胞コンパートメントで活性化RASが発現するトランスジェニックマウス(E-NRasマウス)には、長時間経過後に非リンパ性新生物が生じ、ほとんどの細胞がRBを介する経路を通じて老化していました。 老化細胞には、ヘテロクロマチン領域の存在が以前に報告されていることから、ヒストン修飾が増殖停止に関連することがわかりました。 ヒストンメチルトランスフェラーゼSUV39H1はRBと結合するため、Braigらは、この両タンパク質がともに機能して老化を調節しているかどうかを検討しました。 実際に、Suv39h1を狙い撃ちして抹消したE-NRas マウスは、浸潤性T細胞リンパ腫によって迅速に死亡し、このタンパク質がリンパ腫進行の重要な阻害因子であることが明らかになりました。 Braigらは、SUV39H1およびRBが何らかの形で、老化に必要なDNAパッケージングを調節しているのではないかと述べています。 以上のことを総合すると、老化誘導はきわめて不均一なプロセスではあるけれども、どの腫瘍の進行をも妨げるものであることがわかります。 癌遺伝子が活性化した際に老化の引き金を引く経路を厳密に特定し、一部の細胞がどのようにして老化を免れ、きわめて浸潤性の高い転移性腫瘍に進行するのかを明らかにするには、さらに研究を重ねる必要があります。 Kristine Novak この論文の原文は、ネイチャー誌で確認してください。 |
