
重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス感染に対して、短鎖干渉RNA(siRNA)という阻害物質を使う治療薬の開発は、新興感染症に対する強力な新規治療法の実例です。 生体外では、siRNAはSARSコロナウイルス(SCV)に対する強力な阻害物質となりますが、さらにアカゲザル(Macaca mulatta)SARSモデルで、臨床的に使用可能な送達法を用い3種類の投与計画の比較を行ってその有効性と安全性を評価しました。 SARS様の徴候の観察、SCV RNA量の測定および肺の組織病理学と免疫組織学的知見からは一貫して、siRNAが仲介する抗SARS作用が予防的あるいは治療的投与療法のどちらにおいても有効であることが明らかになりました。 ここで使われたsiRNAによって、SCV感染による発熱の軽減、SCVウイルス量の減少、急性拡散性肺胞傷害の低減が起こりました。 siRNAの累積投与量10-40mg/kgでは、siRNA誘発性の毒性の兆候はまったく見られませんでした。 これらの結果は、臨床試験実施の正当な根拠となり、siRNAが新規標的治療薬の開発時間を大幅に減少できる可能性をはっきり示しています。 この論文の原文は、ネイチャー誌で確認してください。 |
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| 進化は複製ミスに寛容だった | |
地球上で生物が進化していく際に越えなければならない重要なハードルの1つが「どうやって遺伝的複雑性を高めるのか」ということなのですが、このハードルについて、ネイチャー誌の9月号に掲載された研究論文で新たな知見が示されています。 生きた細胞が自己複製分子から進化したとする学説の問題点の1つは、この複製過程に内在する欠陥に由来しています。 分子が大型化し、複雑性を増せば、複製ミス(突然変異)を防止し、あるいは修正できるかもしれないけれども、複製対象となる分子も大型化しているために、突然変異の確率も高まるのです。 この「エラー閾値(error threshold)」というジレンマのために、複雑な分子の進化は停止してしまうと考えられていました。 今回、Eors Szathmaryたちは、数多くの突然変異の場合に、現実の自己複製分子の進化が停止しない可能性があるとする計算結果を発表しました。 彼らは、現実の突然変異(複製ミス)が天然のリボザイム(酵素活性をもつRNA)の予測構造に与える影響を調べた結果、数多くの突然変異は全く影響を及ぼさない可能性が高く、他の突然変異による損傷を消滅させる場合すらあることを発見しました。 このように突然変異による進化の停止が猶予されていれば、7,000塩基のRNAによって構成されるゲノムでも生成され得ます。 これは、RNA世界で最小ゲノムが生存するために十分の大きさです。 エラー閾値の考えは、今でも、ウイルスと戦う方法として大いに関心をもたれています。つまり、薬剤を使って、ウイルスの複製を促進し、複製ミスの数を増やし、エラー閾値を超過させて、ウイルスを撲滅しようという方法です。 この論文の原文は、ネイチャー誌で確認してください。 |
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短鎖干渉RNA(siRNA)、つまり遺伝子の発現を阻害する小型のRNAが、サルで重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスへの感染を防ぐのに有効であることがわかりました。 SARSウイルスに感染前と感染後のマカクザルにsiRNAを経鼻投与したところ、SARS感染の症状が軽減され、ウイルスが引き起こす肺傷害が抑えられましたが、副作用は見られませんでした。 siRNAがSARSの発症を抑えるとともに、既に起こった感染にも治療効果があることが明らかになりました。 今回のPY Luたちの研究は、霊長類でsiRNAを治療に用いて成功した初めての例であり、ヒトのSARSの予防や治療にsiRNAが使える可能性はかなり高まったといえるでしょう。 |
