
この体重増加は、白色脂肪組織中の脂肪細胞の大型化と、肝臓、骨格筋や褐色脂肪組織に大量の脂質が沈着することによります。 これとは逆に、AGFを導入したトランスジェニックマウスは、野生型の対照群より小型で、高脂肪食を与えてさえ体型を保っていました。また、高脂肪食のために体重の増加した野生型マウスに、マウスのAGF遺伝子をコードしているアデノウイルスを投与すると相当度の体重減少が起こるという重要なこともわかりました。 これらの影響はいずれも、摂食量のちがいが原因ではないらしいです。 しかし、Angptl6-/-マウスの代謝を調べたところ、体温と全身での酸素消費率が低下していることが明らかになり、適応的な熱発生(食餌あるいは環境温度に対応して起こる熱発生)が減少したためのエネルギー消費量の低下が、この体重増加の基盤であるとわかりました。 褐色脂肪組織と骨格筋が適応的な熱発生を調節していることは以前から知られていて、これは、エネルギー摂取が過剰になるのに応じて、ペルオキシソーム増殖活性化受容体-α(PPARα)、PPARδ、PPARγ、およびPPARγコアクチベーター1β(PGC-1β)とPGC-1αを介して行われます。 ノックアウトマウスではこれらの因子のすべてが影響を被っていました。さらに、p38マイトージェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)がPGC-1タンパク質の安定化と活性化を促進することがわかっていますが、今回の研究では筋肉中でのAGFによるp38活性化が実証されました。 したがって著者らは、AGFはp38MAPK経路を介して末梢組織での脂肪の燃焼を刺激し、また下流では呼吸とミトコンドリアでの脱リン酸化とエネルギー消費につながる遺伝子の発現に影響を与えていると考えています。 さらに、AGFは造血に影響するが、この働きによってAGFトランスジェニックマウスで見られたように、微小血管の数が増大します。このこともエネルギー消費を促進して肥満と拮抗するのでしょう。 また、ノックアウトマウスでは体重超過が見られるだけでなく、肥満が原因の重篤な高インスリン血症が起っており、インスリン抵抗性が生じていると考えられました。 こういう状態は野生型マウスでも高脂肪食を与えることで誘発されるが、これはおそらくアデノウイルスを使ってAGF遺伝子を発現させると回復できると思われます。 これらの研究は、肥満とそれに関連したインスリン抵抗性に対する薬理学的な治療的介入法の開発に、AGFが重要な標的となることをはっきりと示しています。 次は、AGFの受容体を同定し、AGFと同じような効果を持つアゴニストを見つけだす競争が始まるでしょう。 この論文の原文は、ネイチャー誌で確認してください。 |
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一般的なノックアウトマウスを作出するのは、ちょっとした賭けになりかねません。 つまり、使える表現型があるだろうかとか、胚性致死かもしれないとか、やってみなければわからないことがあるのです。 尾池雄一らは、アンジオポエチン関連成長因子(AGF)をコードしている遺伝子をノックアウトしたのですが、これは賭けとしては大当たりでした。 これによって、肝臓から分泌され、血液中を循環するオーファンペプチドであるAGFが、肥満やそれに関連して生じるインスリン抵抗性を防止するように働いていることが確証されたのです。 AGFノックアウトマウスは心臓血管系に欠陥があるため、80%が胚性致死であることがわかったのですが、生存した仔マウスは成長します。しかしその成長は常軌を逸しており、実際AGFノックアウトマウス(Angptl6-/-)は生後24週で体重が野生型のほぼ2倍になりました。 |
