近くの不規則な小型銀河獅子座A
Credit & Copyright: V. Vansevicius (IoP Lithuania), N. Arimoto (NAOJ) et al., Suprime-Cam, Subaru Telescope, NAOJ
画像の説明
 なぜ、この小さい銀河は、単純ではありませんか?
 近くの小さい銀河獅子座Aのこの画像と最近の観測は、この銀河が単純な構造であることを示すはずでした。
 現在、獅子座Aは、宇宙の中の銀河の最も一般的なタイプのうちの1つである小型の不規則銀河で、私たちの天の川銀河のようなよりさらに大きい銀河と基礎単位を構成する有望なタイプの銀河として知られています。
 一般に大規模な銀河は、近来、それらを囲む小型の衛星銀河を絶えずむさぼって主に構成していることを示していました。
 獅子座Aの驚くべき複雑さは、おそらくこのような小さな銀河の多くが、ほとんど大規模な銀河と同じような複雑な形成履歴を持っていることを示します。
 獅子座Aは、星座獅子座の方角におよそ250万光年離れて位置し、およそ1万光年の範囲があります。
 今日の宇宙画像は、天の川銀河の衛星銀河である獅子座小型銀河です。
 日本の国立天文台が誇るスバル望遠鏡のスクープとも言える画像です。
 小型の不規則銀河が、銀河のディスク構造と異なる構造で銀河の外側にあってハローと呼ばれるものを持っているかどうかが、これまでずっと不明でした。
 そこで、各国のチームがしのぎを削って一番乗りを目指していました。
 つい最近、スバルの研究チームがスバル望遠鏡の特性を生かして一番乗りを果たすと共に、これまでの小型不規則銀河の定説を覆す結果を得た模様です。
 銀河は、例え矮小であろうとも複雑極まりないことを誇示しているのかもしれませんね。
 2004年11月10日 t.sasaki


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Leo A: Nearby Dwarf Irregular Galaxy
Credit & Copyright: V. Vansevicius (IoP Lithuania), N. Arimoto (NAOJ) et al., Suprime-Cam, Subaru Telescope, NAOJ
Explanation
Why isn't this small galaxy simple? The above image and contemporary observations of small nearby galaxy Leo A were supposed to show it has a simple structure. Now Leo A is known to be a dwarf irregular galaxy - one of the most common types of galaxies in the universe and a type that is likely a building block of more massive galaxy like our Milky Way Galaxy. In general, larger galaxies have recently been shown to continually eat, and be primarily composed of, many of the smaller satellite galaxies that have surrounded them. Leo A's surprising complexity indicates that that it, and possibly many small galaxies, have formation histories nearly as complex as large galaxies. Leo A spans about 10,000 light years and lies about 2.5 million light years away toward the constellation of Leo.
2004119日号

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t.sasaki
 3D立体画像の付録です。交差法で立体的に見るには、左右の画像の中間(画像下の真ん中の黒点の上)に両目の焦点を合わせます。いわゆる、寄り目にします。平行法で立体的に見るには、左右のそれぞれの画像の下にある黒点の上の真ん中あたりに視線を持っていきます。このときには、両方の画像が、ぼんやりと見えるように画面をつき抜いてその先に焦点を当てるつもりで見ます。ほとんどを交差法にしています。平行法で見たい方は、画像をコピーして左右の画像を入れ替えてください。2002年4月30日ページに立体視の方法について掲載しています。
図 1

 主焦点カメラによる矮小不規則銀河しし座 A の V バンド(0.55ミクロン)画像。4つの楕円 (軸比 0.6) はこれまで知られていた銀河の大きさ (長半径3.5 分角) を青緑色、今回発見されたハロー成分が卓越しはじめるところ(同5.5 分角) を青色、新しく確立されたしし座 A の大きさ (同 8.0 分角)を赤色、背景の天体の表面密度分布を求めるために用いた領域 (同 12.0 分角)を緑色で示しています。
Credit & Copyright: Subaru Telescope, NAOJ, et al.
図 2

  しし座 A の中心から外側に向けての赤色巨星の個数分布(長軸方向の表面密度分布)。各線は、長半径が 2 分角から 5.5 分角に存在する古い星から成る円盤 (青)、5.5 分角から 7.5 分角の領域に広がる ハロー (赤)、そして背景成分として用いた 8 分角から 12 分角の領域 (緑) の分布を表しています。
Credit & Copyright: Subaru Telescope, NAOJ, et al.

 この画像で、銀河は何をしていると思いますか?

 横に広がっている青白い銀河は、私たちの天の川銀河を表していて、上下に輪を作っているように見えるのが隣人の小型銀河です。

 最近の広い領域画像と分析は、現在、私たちの天の川銀河が、実際に今でも最も接近した衛星銀河の隣人をむさぼる過程にあることを示します。

 この画像で示されている銀河は、残念無念の思いがたぶん強い射手座小型銀河です。

 この銀河は、現在よりも大きい射手座潮流と呼ばれる一部であったと見られています。射手座潮流とは、星やガスの遊離したフィラメントと天の川をもつれさせるおそらく暗黒物質の潮の流れです。

 この画像では、潮流れのアーティストの描写が、上方に表されています。

 また、この射手座小型銀河は、かつて私たちの太陽の現在の位置に非常に近い天の川のディスクを切り抜けたと推測されています。

 重要な結果として起こる事象としては、銀河が塊りの混乱に陥ったり、薄暗くする暗黒物質のフィラメントに含まれることです。

Credit & Copyright: David Martinez-Delgado (MPIA) & Gabriel Perez (IAC)
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 国立天文台・リトアニア物理学研究所・ダーラム大学・パリ天文台・京都大学・ ぐんま天文台・東京大学の研究者からなるチームは、すばる望遠鏡を用いて矮小不規則銀河「しし座A」内の星の分布を調べ、この銀河はこれまで知られていたよりはるかに大きく広がっており、しかも外縁部にはっきりとした境界をもっているという新たな構造を明らかにしました。

 この発見は、極めて質量の小さな銀河にも複雑な構造が形成されることを示しており、銀河進化理論が解決すべき新たな問題を提示するものです。

 宇宙初期から現在に至るまでの銀河の形成、およびその進化を明らかにすることは、天文学の最も大きな課題のひとつです。

 現在標準となっている宇宙モデル(注1)では、宇宙初期の密度揺らぎからまず小さな天体(銀河の種)が生まれ、それが衝突・合体を繰り返すことによって、天の川銀河のような大きな銀河が形成されると考えています。

 矮小不規則銀河(注2)は、宇宙で最も数多く存在している銀河で、誕生から何十億年ものあいだ変わらずにその性質を保持していると考えられています。これらはより大きな銀河が衝突・合体によって生み出される際の種になる銀河ではないかとみられ、研究者の強い関心を集めています。

 研究チームは、「しし座A (Leo A)」 とよばれる矮小不規則銀河に注目しました。この銀河は、天の川銀河系のわずか10,000分の1と非常に質量が小さくて、他の銀河から孤立して存在しており、極めて大量のガスを保持しているといった特徴があります。

 これはこの銀河が他の銀河の干渉を受けずに進化してきたことを示唆しており、天の川銀河のような巨大な円盤銀河とは対照的に、極めて単純な構造をしているとこれまで考えられてきました。しかし、すばる望遠鏡で銀河の外側まで深く撮像観測した結果、これまでの考え方は変更を迫られることになったのです。

 これまで知られていたしし座 A の見かけの大きさは 7 分角× 5 分角(注3)です。

 すばる望遠鏡の主焦点カメラ(Suprime-Cam)は広い視野(34分角×27分角)をもち、しかも暗い星までも映し出すことができるため、この研究に非常に適した観測装置です。

 研究チームは 2001年11月に可視光の3色で観測を行い、この銀河内で赤色巨星がどのように分布しているか調査しました。赤色巨星は、太陽のように質量の小さな星が進化を遂げた段階にある非常に明るい星で、銀河外延部の構造を調べるのに適した星です。

 研究グループはしし座 A がすっぽりと納まる楕円(長軸半径 12 分角、短軸半径7分角)の内側を詳細に調査し(図1)、全部で 1394 個の赤色巨星を検出しました。

 図2は、しし座 A の中心から外側にむけての赤色巨星の個数分布を示しています(横軸はみかけ上の長軸半径)。

 研究チームは、これまで半径 3.5 分角程度とみられていた円盤成分は、実はずっと大きくて 5.5 分角まで延びていることを発見しました。そしてさらにその外側、7.5分角までにも赤色巨星は分布していることも明らかになりました。

 この領域では赤色巨星の個数分布の変化が緩やかで、円盤成分とは異なる構造であるとみられ、研究チームはこれを「ハロー」とよんでいます。このようなハロー構造が矮小不規則銀河で見つかったのは初めてのことです。

 そして、銀河の中心から 8 分角のところで赤色巨星の分布が急激に減少しており、このハロー成分は、はっきりとした境界をもって途切れているといえます。矮小不規則銀河がハローを持っているかどうかがこれまでずっと不明で、世界中の研究者がハローの発見にしのぎを削っていたのですが、研究チームは、すばる望遠鏡の特性を生かして一番乗りを果たしたのです。

 このように、しし座 A の大きさはこれまで考えられていたよりも 2 倍以上あることが明らかになりました。

 銀河がこれまで考えられていたよりも数倍広がっているとすれば、ごく近傍の宇宙でさえ、私たちは銀河の「氷山の一角」しか見ていなかったことになります。

 このように、矮小不規則銀河しし座 A は、これまでに知られていた円盤成分に加え、ハロー成分をもち、その外側には星の分布にはっきりとした境界があるということが明らかになりました。この構造は、天の川銀河のような一人前の大きな銀河の構造に非常によく似ています。

 大質量銀河の複雑な構造は、小質量銀河が衝突・合体を繰り返した結果形成されたものであるとこれまで考えられてきました。

 ところが今回の結果は、宇宙初期の冷たい暗黒物質の密度揺らぎから直接形成されると考えられてきた極めて小質量の銀河でさえ、複雑な形成の歴史を辿ってきたことを示唆しており、現代の銀河進化シナリオに疑問を投げかけるものです。

 研究チームは、しし座 A が 銀河の形成と進化の過程を理解するための「ロゼッタストーン (注4)」であると注目しています。


注1:宇宙は冷たい暗黒物質に満ちていて、観測されるのは通常の物質からなる銀河だが、その形成は暗黒物質による重力作用に支配されているというモデルのことです。

注2:矮小不規則銀河とは非常に小さなサイズで、星とガスが不規則状に分布している銀河のこと。天の川銀河とは異なり、渦状構造は見られません。

注3:しし座 A までの距離 260 万光年では、1 分角は 750 光年に対応します。

注4:エジプトのロゼッタという町で 1799 年に発見された石碑のことで、紀元前の3種類の文字で同じ文章が書かれており、古代文字の解読に画期的な役割を果たしましたた。現在は、イギリスの大英博物館に展示されています。